この度、ドンクール・レ・コンフラン飛行場(Aero Club of Doncourt-les Conflans)というフランスの歴史的名建築のためにデザインされたカフェテーブルの入荷に伴い、プルーヴェやコルビュジエなど世界の巨匠たちが携わった歴史と合わせてご紹介致します。
フランス北東部、グラン・テスト地方の町ムルト・エ・モゼルにある施設、元々飛行場でもあった航空クラブハウスは、ジャン・プルーヴェと親交のあった建築家ジャック・オジェの指揮のもとに設計された建築作品でした。
ことの発端は1937年、建築家のジャック・オジェは見習いパイロットの訓練場と宿泊を目的とした航空クラブ設立プロジェクトの発案でした。ジャック・オジェはレイアウトをジャン・プルーヴェに依頼、室内装飾(インテリアデザイン)をフェルナン・レジェに依頼し3者のコラボレーションが生まれてゆきました。
建築の竣工間近であった1939年から、悲劇的にもドイツ軍に占領されてしまい1944年にはドイツ軍によっては破壊されてしまいましたが、終戦後の復興期となった1950年代初頭からル・コルビュジエをプロジェクトチームに参加させ本建築の再建が目指されました。
ジャック・オジェは息子の協力を得て新たな計画を立案し、ジャン・プルーヴェは1950年に屋根のエレメントをデザインしました。1953年から1954年に建築自体は完成したものの、財政難、フェルナン・レジェのチーム脱退など混沌とした様々な要因によりプロジェクトは有効活用されることなく、その後は取り壊しや譲渡が検討され、計画の頓挫が繰り返されながら、この作品は住宅やバーなどに姿を変えながら忘却の彼方へと消えていってしまいました。
1980年代末にようやくこの建築の価値が再発見され、1999年に歴史的建造物として指定されフランス政府に保護されました。2011年から2013年にかけて建築家クレール・ビローとフランソワ・カプドゥナ・クリスティ(B2C)、クリスチャン・エンジョルラスにより1930年代当初のオリジナルの計画を尊重して再建され、改装されました。この建築の再生プロジェクトが行われました。現代的な快適さを加えながらモダニズムの精神が融合されたこの建築作品は、現在は週貸しの宿泊施設として生まれ変わり活用されています。
完成した建築は控えめでシンプルな構造ながらもその設計は非常に複雑でモダニズム建築のコンセプトを極めています。これぞプルーヴェという素材使いである2つのアルミニウムの船のようなフォルムで構成され、全体はガラス張りと赤く(朱色に近い赤)塗装されたファサードで強調されているのが特徴です。
この建築は隣接する2棟の建物から構成され、正方形で厳密なプランニングがなされている。ル・コルビュジエが考案したプロポーション・システム「モデュロール」によって、全体の寸法が決められています。大きな出窓からは、2つの内部空間のうち1つが飛行場に面しています。
ジャン・プルーヴェによるプレハブ式アルミ屋根は放物線状のシェルで構成され、下部は耐荷重のある石造りの壁で止まっています。この軸組の壁が目に見える切石であるのに対し、他の壁は白く塗られています。
ドンクール・レ・コンフラン飛行場の端の緑に囲まれたこの航空クラブからは美しい渓谷など豊かな自然を眺めることもできます。
この度Archèologie Studioでは、上記ご紹介した建築作品のためにデザインされた1930年代当時の大変貴重なオリジナル家具作品が入荷しました。ご興味のある方は是非当Eストアよりご覧ください。
・Cafe Table Attributed to Jean Prouve, for the Aero Club of Doncourt-les Conflans →
https://shop.archeologie.jp/collections/all/products/cafe-table-attributed-to-jean-prouve
参考資料:ル・コルビュジエ著書:Modulor II