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「リコンストラクションスタイル/commission du meuble de France」のヴィンテージ家具が生まれたフランスの戦後復興期について

「リコンストラクションスタイル/commission du meuble de France」のヴィンテージ家具が生まれたフランスの戦後復興期について

前回、前々回の記事でご紹介しましたマルセル・ガスコアンロジェ・ランドーの偉大さをより深く知って頂くために、彼らが活躍した時代背景について一度触れる必要があると考え、本日は「リコンストラクションスタイル/commission du meuble de France」のヴィンテージ家具が生まれたフランスの戦後復興期について書かせて頂きます。

 

 

1939年から1945年にわたる第二次世界大戦期の被災を経て、膨大な数の被災者が生まれ、戦後のフランスは建築や被災者の住まい再建とともに家具の生産の必要性に直面していました。

 

 

第二次世界大戦の終わりにはヨーロッパでは約1000万人を超える人が家を失い、特にフランスはドイツに次いで2番目に大きく被災した国の一つでした。当時のフランスは200万人の犠牲者とともに31万戸の家屋、44万棟の建物が完全に破壊されており、産業やインフラへの損害回復の問題を解決していく必要がありました。

 

 

中でも建築再建と家具の生産は戦後におけるフランスにとって最優先課題となっていましたが、総力をあげた取り組みであったにも関わらず、最終的にこの問題が解決していくまでは15年もの歳月を要しました。戦争で破壊された建築物、家具、内装の再建だけでなく、若い世帯や大家族、一般住民のニーズにも応えなければなりませんでしたが、これまでフランスにおいてこのような仮設住宅の分野は特に研究されてきた訳ではなく、復興初期においては資源確保や理論構築に時間がかかってしまった背景がありました。

 

当時の被災者は皆一様に高価な家具を購入できるほどの金銭的余裕はないため、適度な価格帯のものを用意する必要がありました。しかし、安さを追求するあまりに品質を犠牲にしてしまってはいけないという観点のもと、当時のフランスの工業生産省は雇用者と労働者双方の専門組織と合意して、ともにこの問題の解決に取り組んできました。

 

 

重要だった家具の生産は、国から指示されたプログラムの枠内、すなわち一定の水準のクオリティをしっかり満たすことが条件とされ、当時の国をあげてのミッションは家具業界と連携をとり、多くのフランス人たちに品質とセンスの良い家具を提供するため、資金も物資も不安定な中で当時の建築家や家具デザイナーたちも自国の復興のために長きにわたり力を尽くし活躍したのがこの復興期でした。

 

 

建設中の都市の近くに建てられた仮設住宅団地には多数の都市居住者が住んでおり、それらの緊急住宅は最小限のサイズのもので提供されていました。当時のフランスでは、人的資源も材料も不足しており、仮設住宅の文化や研究は十分に発達していません。さらに未熟なプレハブ住宅での生活には障害が数多くあり、復興初期にあたる1945年から1950年の間に利用可能になった住居や仮住居は13万戸だったと言われており、実際のニーズを満たす目標値の住宅再建にはまだまだほど遠いものでした。

 

 

政府の復興プログラムは1948年に強化され新しく、手頃な価格で、より小さく、実用的な生活空間にも製造過程にも適した優れたデザインの機能的な家具が必要でした。復興直後の狭小住宅では被災者が暮らす上でまだまだ不便が多かった中、「Commission du meuble de France」という当時の装飾家、家具メーカー、商社、職人などで構成されるプロフェッショナル集団により、当時の被災者の暮らしが少しでも豊かになるよう家具の生産目標が掲げられました。

 

 

そして当時何百ものコンペの中からこの目標を達成することのできる家具モデルが選考されていました。これらの家具モデル、そしてインテリアデザインは、ルネ・ガブリエルやロジェ・ランドーやマルセル・ガスコアンやジャン・プルーヴェなど当時のフランスにおける最高の建築家、装飾家、家具デザイナー、エンジニアたちが家具を工業生産するためにデザインされたものです。

 

 

これらは完全に自由な芸術や表現ではなく、小さな部屋でのユーザビリティ、品質を保ちながら工業生産が可能な生産プロセスやデザインモデルなど、一定の制約の中で繰り広げられた、それまでの自由な表現を重んじるフランス人の仕事とはまったく異なる傾向が求められました。

 

 

元々前衛的であったフランス人のデザイナーたちは、これまで誰も試みたことのない類の試みを実現するという任務が与えられましたが、この時期の偉大なデザイナーたちは、連続生産と大量生産と品質が矛盾せずに実現できることを明確に示しました。狭小住宅の中で活きる機能的で合理的なインテリアと家具が必要でしたが、この点はダイニングルームとリビングルームの関係性において、家具の柔軟で可変性ある配置を備えた機能が示されるようになりました。バスルームとキッチンは小さく、効率を最大化するために整理されていました。

 

 

この時代のデザイナーたちは家具の工業化、輸送のし易さなどの現実的な制約を考慮し、よりシンプルな形の板を組み立てることで成り立つ家具、より少ない人数で簡単に組み立てができる構造の家具設計がなされ、組み立て時も解体時にもDIYがし易いような構造が剥き出しになった作りで、小さなメーカーでも簡単に生産することができるといったこともこの時代のリコンストラクションスタイルの家具の特徴です。家具の質素さが増し、装飾品や余計なパーツも削がれミニマルになりました。木の素材感を活かしたスタイルがより明確に主張され、フランス独自の素朴さとモダンさの美しいバランスも実現されています。

 

 

このように「リコンストラクションスタイル」の家具は一式セットになる性質があり、素朴な構造ながらもモダンでエレガンスを備えた、当時のフランス人が成した偉大なプレゼンテーションそのものでした。

 

 

様々な制約の元でも家具の生産に力を発揮したのは、フランスのモダニズム運動の最前線に立っていた類稀な才能の持ち主たちでした。Archèologie Studioでは、今後も当時のフランス最高峰の知性であり、実践的なイノベーターであった建築家やデザイナーを研究して参ります。

 

 

ご興味のある方は、当オンラインショップに掲載している以下の作品もご覧ください。愛好家の皆さまからのお問い合わせをお待ちしております。

 

Tabouret 3-positions by Marcel Gascoin

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French Vintage Wooden Wall Cabinet

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French Vintage Tapered Leg Stool

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Set of Four Roger Landault Chair 6517

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