建築モダニズムの発展における象徴的な建築家として真っ先に名前が挙がるル・コルビュジエ、ミース・ファンデル・ローエ、ウォルター・グロピウス(バウハウス初代校長)、彼らには共通の師となる建築家がいたことをご存知でしょうか。
その名もペーター・ベーレンス(1968-1940)、ドイツで活躍した建築家でデザイナーでモダニズム建築や工業建築の分野の発展に多大な影響を与えた人物です。1890年代までは画家、グラフィックデザイナーとして活動していましたが、ドイツ工作連盟の中心人物だったヘルマン・ムテジウスからの影響を受けて建築家に転向することになります。
1907年にベルリンに事務所を開設し、1910年代にはスイス出身の工業デザイナーで建築家のウィルヘルム・キンツレと協業していました。絵画を学び美術やデザインの世界で活躍し建築との綜合表現を行い、引いては「生きる事を芸術表現とする」というペーター・ベーレンスの哲学は、機能主義的な建築作品とともに後のコルビジェのスタイルに多大な影響を与えたことは想像に難くありません。
自身のアトリエを立ち上げた年、ドイツのハーゲンに位置する「ハーゲン火葬場」では純粋に機能的で実用的なデザインの設計を試み、ペーター・ベーレンスは自身の建築家としての方向性を初めて示しました。同年よりペーター・ベーレンスはドイツの電機メーカーAEGのデザインディレクターに就任します。当時まだアール・ヌーヴォーの時代様式の潮流もある中、装飾主義や曲線美とはかけ離れた機械主義、機能主義的な美を備える革新的なプロダクトを次々と生み出していきます。1908年〜1909年に手掛けた同社の「タービン工場」は現代においてこの建築作品はモダニズム最初期の建築作品と評されています。
ペーター・ベーレンスはAEGにおいてロゴデザイン、住宅設備や照明器具、家電、文房具など工業製品全般のデザインに至るまで、建築家の領域に収まらない綜合的な仕事を手掛けました。建築やプロダクトのデザインの領域を超えて、現代でいうところのクリエイティブディレクター、アートディレクターとしての仕事の礎を築いた事もペーター・ベーレンスの偉大と言えるでしょう。
また、上記の通りベーレンスのアトリエからはコルビジェの他、後にバウハウスを支えるウォルター・グロピウスやミース・ファンデル・ローエなど輩出しており、未来の建築家を育てたこともまたペーター・ベーレンスの計り知れない偉大な功績の1つです。
コルビジェやミース、グロピウスに影響を受け数多くの建築家が生まれている史実に触れることで、歴史はぶつ切りのものではなく確かに連なっていて、今も尚続いている物語があるのだと想像することができるのではないでしょうか。
この度Archèologie Studioでは、上記ご紹介した「ペーター・ベーレンスがドイツのSIEMENS社のために1908年にデザインした特別なペンダントランプ」が入荷しました。当時ドイツで駅などの公共建築に使われていた貴重な作品です。乳白ガラスとフロストガラスの上下のパーツが金属のリムとネジで一体になった機能美を持つ構造で、美しい曲線と光を生み出し室内を演出してくれます。
モダニズム初期の家具にご興味のある方、建築愛好家の方は下記のページよりご覧ください。
>>> Luzette Pendant Lamp by Peter Behrens